主人公が身に覚えがない汚名を着せられて周囲に嫌われる。
頑張っているのに次から次へと悲劇が襲ってくる。
物語をドラマチックにするために盛り上げる要素の一つとして
主人公を襲う困難や悲劇というものがあります。
例を挙げるとすると
身に覚えのない悪事を主人公のせいにされたせいで家族や友人、好きな人にも見放された主人公。
→絶望して死を覚悟するも自分を信じてくれた人に激励されて奮起を決意。
→主人公に着せられた汚名を返上して潔白を証明する。
→自分を信じなかった家族や友人、好きだった人に謝罪される。
→自分を信じてくれた人と結ばれてハッピーエンド。
……と、不遇に立たされた主人公が幸せに向かって奮起し突き進み
そして幸せをつかみ取る、読者はそこにカタルシスを見出すのです。
ところが話はそう単純ではありません。
主人公が嫌われる理由(困難)、そこから生まれる悲劇、そしてどうやって巻き返して幸せをつかみ取るのか。
ここがしっかりしていないとこういった悲劇描写は逆に読者はあなたの作品から離れていくことになるのです。
Contents
困難は悲劇を扱う上での注意点。
主人公が自力で状況を打破しないといけない。
主人公の境遇は主人公本人が何とかしないといけません。
もちろん主人公を手助けするキャラクターは存在してもいいですが、当の本人が動かないと話になりません。
周囲の地位がある人、力がある存在、そういった存在が勝手に動いて勝手に主人公の環境を解決してる……
というのはあまり喜ばれる手法ではありません。
「家族に才能の無さが原因で虐められ悪評が立つ相手に嫁がされるも実は優しい人だった」
→「その人が主人公の良さに自発的に気付く(主人公は何も行動していない)」
→「主人公を冷遇してた実家マジ許せねぇ」
→「報復だ!!」
→「主人公を苦しめてた環境は無くなりました」
→「主人公はじっとしてただけだけど幸せになりました」
→「ハッピーエンド☆」
これではカタルシスも何もありません。
ある意味、シンデレラストーリーとも言えなくはないですが
主人公本人が何もしていないとそれはご都合主義と言われても仕方がないのです。
悪評が立つ人物なのに実は優しい人物だった、というのも偶然として片づけるにはいささか都合がよすぎます。
事実、困難や悲劇を周囲の助けがあっても己の力で乗り越えたキャラクターと
周囲が勝手に動いてくれたおかげで自分はほぼ何もしてないけど幸せになれたキャラクターとでは読者の思い入れも段違いです。
主人公の問題は主人公が奮起して解決する。
これが鉄則です。
むやみやたらに可哀そうな目に遭わせればいいというわけではない。
主人公に何も非がないのに冷遇されたり、悲惨な目に遭うと読者は
「主人公何も悪くないのに可哀想!」
「幸せになってほしい!」
と思ってくれます。
しかしあまりに度が過ぎると「作者のキャラ萌え」に捉えられることもあるのです。
何故キャラクターが度を越えた悲しい状況に立たされていると「作者のキャラ萌え」と言われるのか。
それは「可哀想萌え」というものです。
言葉の通り「可哀想な目にあって苦しんでる〇〇ちゃん可愛いなぁデュフフフ」というやつです。
作者のキャラ萌えとは何ぞや?という方は下記のURLから記事を参照してください。
以前紹介した「作者のキャラ萌え」の記事はこちらです。
お気に入りキャラは読者に悟られてはダメ!気を付けるべき注意点!
決して作者のキャラ萌えはキャラクターが贔屓されて優遇されているというパターンだけではないのです。
突き抜ければある意味ネタとして愛されることもありますが
ネタにもされず作品の魅力を貶める結果に終わってしまった場合は悲惨です。
あまりにも無意味な悲劇描写をすると読者は嫌がります。
いわゆる「可哀想可哀想ばっかりで鼻につく」という状態です。
扱い方は十分気を付けましょう。
悲劇展開があればそれを打破する描写を必ず入れる。
作品の結末がハッピーエンドでもバッドエンドになろうとも必ず悲劇的な状況を
主人公が一度は打破する描写は必須です。
打破する描写がなくバッドエンドになっても読者は
「え……?結局可哀想な目にだけ遭ってそれで終わり??一体なんだったの???」
となってしまいます。
最終的にバッドエンドになる作品であったとしても一度は乗り越えたのにまた不運に見舞われ悲劇的な最期になる、
という展開でないと読者のカタルシスは生まれません。
人々を魅了する悲劇的な結末というのは主人公が必死に足掻き藻掻いて乗り越えたのに
運命に愛されなかった、というところにあるのです。
ハッピーエンドでも同じです。
主人公が困難に立ち向かい悲劇に見舞われ苦しみながらも乗り越えたからこそ幸せな結末が
読者の心に沁みるのです。
かの有名な冒険の代名詞オデッセイの由来となった「オデュッセイア」の主人公オデュッセウスも 長く続いたトロイア戦争を生き残り愛妻ペーネロペーがいる故郷へ帰ろうとするも
・神の息子を(仕方がなかったとはいえ)倒したせいで神から呪われる
・魔女や女神に求婚されて断ってるのに数年単位で拘束される。
・仲間は全員死亡する。
・荒波に放り投げられて身体一つになる。
・帰還に間に合わず母親と一生の別れになってしまう。
などなど挙げるとキリがないレベルで困難に見舞われるのですがそれでもオデュッセウスは全てを乗り越えて 愛する妻ペーネロペーと再会し幸せな余生を送るのです。
浮き沈み、山を越え谷に下りそしてまた山を越える。
そういった波があってこそ、物語はより輝き読者を魅了する、というわけです。
まとめ
・むやみやたらに可哀そうな描写をいれない
・やりすぎには注意
・悲劇的な状況は結末に関係なく必ず本人が打破する描写を入れる。
物語上、困難や悲劇は避けられないものです。
だからこそそこで乗り越えようと奮闘する主人公は読者を惹きつけるもの。
あなたの作品がより多くの読者の心を射止めれるように祈ります。