キャラクターの創作ヒント

主人公と同じくらい大事?ラスボスの作り方

2023年12月26日

 

ファンタジーやバトル物では欠かせない存在。
ラスボス。
主人公たちに立ちはだかる最大の壁。

このラスボスのキャラクター造形やどうやって撃破するかによってクライマックスの盛り上がりには天地の差が生まれます。

ソーサク
今回はラスボスについて語っていくよ!

ラスボスはどういうキャラクターにするべき?

 

そりゃ主人公の敵で最終的に一番強い相手でしょ?
ショーゴ
ソーサク
そうだね、それ以外は何か思いつく?
あとは~……めちゃくちゃ悪い奴!
ショーゴ
ソーサク
悪い奴かぁ。それは間違ってはないけど正解でもないかな

 

ラスボス=悪というのは正解ではない?

そもそも悪い奴、とはどういう定義でしょうか。
主人公たちの邪魔をする、罪のない人々を苦しめる、自分の快楽ばかりを優先して他者を蔑ろにする、他人にかける迷惑をちっとも考えない……。
おそらく思いつくのはこういった「悪」でしょう。

主人公を「善」に据えるなら敵対するラスボスは「悪」になる。
それは確かに道理です。
悪い敵(ラスボス)を撃破し主人公たちは讃えられる。それは気持ちのいい結末でしょう。

しかし「それだけ」で終わってしまうのです。
良く言えば「勧善懲悪」、悪く言えば「単調」。

読者の脳内に刻まれ残り続けるようなラスボスになりえるでしょうか。
魅了し記憶に残り続けるラスボスを生み出したい、というのであれば工夫が必要です。

でもラスボスだし悪い奴は悪い奴であるべきだよね?
ショーゴ
ソーサク
じゃあその「悪」についてもう少し掘り下げよう

 

ラスボスの「悪」とはどうあるべきか

結論を言うと「主人公の目的を邪魔する存在」。これに尽きるのです。
ポイントなのが「主人公の大義を邪魔する」のではなく「目的を邪魔する」なのです。

大義と目的は違うの?というかよくわからないよぉ
ショーゴ

主人公の大義と目的、ラスボスの在り方の決定はそこに大きく関わってきます。
ではその「大義」と「目的」について話しましょう。

ソーサク
主人公の大義と目的はわかりやすくいうと大義は建前、目的が本音、かな
大義が建前、目的が本音……なるほどわからん
ショーゴ

ではここで一人の主人公を作りましょう。

<例題>
主人公Aは生き別れになった妹と会うために戦士をしています。
→何故戦士をしているのか、それは世の中を苦しめてる魔族が妹を連れ去ったからです。
→主人公Aは妹の手がかりを得るために魔族に苦しめられている町や人々を救います。

 

ソーサク
はい、ここでショーゴ君に質問です。この主人公Aの大義と目的はなんでしょうか?
えぇっと……主人公の目的は妹を探すことで魔族に苦しめられてる人々を助けるのは大義、かな
ショーゴ
ソーサク
はい、正解!

主人公Aにとっての目的は魔族に苦しめられている名も知らない誰かのため、ではありません。
しかし馬鹿正直に「助けたいのは妹であなたたちはぶっちゃけどうでもいいです」なんて言う主人公はそうそういないでしょう(笑)
つまり主人公Aにとって人々を助けるのは妹のところにたどり着くため、なので効率よく妹の情報を得るために
人々を苦しめてる原因=魔族を倒すという構図が出来上がります。

ここで重要なのが主人公Aにとっての大前提が目的(妹の救出)>大義(魔族に苦しめられている人々を助ける)であることです。
この大前提がなければラスボス作りにも大きく影響してきます。

 

ラスボス足りえる意味は主人公の目的の妨害

そしてここで話は戻ります。
冒頭で説明したようにラスボスは主人公の目的の邪魔をする存在であるべきなのです。

ソーサク
主人公の目的の邪魔……つまり例題の主人公Aの目的の邪魔、ということなら妹の救出の妨害、だね
妹が絡んでないとダメなの?
ショーゴ
ソーサク
ダメだよ!じゃあ仮にラスボスが主人公の目的に関わってない場合で考えようか

 

<例外2>

妹の居場所を突き止めた主人公A。それはラスボスに従う幹部Bの居城だった。
ラスボスの命令ではなかったが妹の美しさを一目で気に入った幹部Bが独断で連れ去ったのだった。
ついに怨敵の幹部Bと対峙し勝利した主人公A。
妹と涙の再会をし仲良く故郷へ帰っていきましたとさ。めでたしめでたし。

 

あれ!?物語終わっちゃった!ラスボスとの対決は!?
ショーゴ
ソーサク
なんで物語が終わってしまったのか、それはわかりきってることだよ

主人公の目的は「妹を探すこと」。それが達成してしまった以上、主人公が戦士を続ける理由もなくなります。
なので魔族と戦う理由も消失します。よってラスボスと戦う理由もなくなり主人公は物語からフェードアウト……となるのです。
目的がなければ大義は成り立たない、これはとても大切なことです。

これじゃあ幹部Bがラスボスじゃん……
ショーゴ
ソーサク
だからラスボスは主人公の目的を邪魔する存在でなければならないんだよ。物語が成立しないからね

なのでこの場合は「妹の誘拐はラスボスの命令だった」ってことにすれば途中で妹奪還に成功してもラスボスが何かの理由で妹の身柄を狙っているのであれば主人公は妹を守るために戦いに身を投じ続けることになります。

 

もちろん物語の中で主人公の目的が変わることもあります。
例えば妹が死んでしまいもう再会が叶わない

→自暴自棄になるが今まで支えてくれた仲間たちに叱咤激励されて立ち直る

→もう自分のような人々を生み出したくない

……という流れなら主人公の目的は「妹を探す」→「悲劇を生んだ親玉(ラスボス)を倒す」に切り替わります。
このように主人公の目的が変わる場合でもラスボスは密接につながっている必要があるのです。

 

ラスボスは読者に理解される存在ではいけない?

ラスボスも物語に生きるキャラクターである以上、過去があります。
しかし過去を語る、という手法は「読者にそのキャラの理解度を高めてもらう」という意味が込められています。
ゆえにラスボスの過去話、というのはちょっと気を付ける必要があります。

何故なら「読者に理解されたラスボスはラスボス足りえない」からです。

え???どういうこと????
ショーゴ

 

ラスボスには色々なパターンがあります。
そのラスボスの思想には共感できる場合もあります。
ですが、ラスボスは読者は完全に理解されきってはいけない存在なのです。

ラスボスである以上、作中に登場したどんな悪役よりも巨大でなければなりません。
それが読者の理解に届く位置にいる、というのはいささか恰好がつきません。
いわゆる「このラスボスやべぇ」とならないのです。
届かない存在だからこそ、理解できない存在だからこそ、遥か遠く高く立っている存在を主人公はどうやって打ち倒すのか。
読者のカタルシスはそこにあるのです。

対策としての方法は簡単。あえてラスボスの過去を書かない、ということです。
人となりを知る有効な手段は過去を知ること。
過去に何があってどういった経緯があって今の価値観になったのか、それがなければ読者は「わからない」まま。
悪役を悪役として華々しく活躍させるには有効的な一手なのです。

ジャンプの人気漫画「BLEACH」の敵キャラ、藍染惣右介はその典型ともいえます。
作者である久保先生はあえて藍染の過去を描かない、という手法を取りました。
これにより藍染のバックボーンは一切わからない、ということがより彼の不気味さとおぞましさを引き立てたのです。

また「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」のラスボス吉良吉影も
作者である荒木先生は「この人は本当は悲しい奴なんだなって読者に思われないように過去話を描かなかった」と発言しています。
「読者に同情(理解)してほしくない」という思惑があったからこその判断だったのです。

 

なるほど……悪役として引き立たせるためにあえて過去話を描かないっていうのも一つの方法なんだね
ショーゴ
ソーサク
理解ができないからこそラスボスとして成立する…… 難しいけれどそれをクリアすればきっと魅力的なラスボスが生まれるよ

 

まとめ

・ラスボスの悪とは主人公の目的を邪魔すること。
・ラスボスは必ず主人公の目的と密接する存在であるべき。
・読者に理解されすぎない立ち位置でいることでラスボスとしての格ができる。
・あえて過去話を描かないのも一つの手。

 

いかがでしょうか。
ラスボスを作るのは意外と難しいですがコツさえ掴めば魅力的なキャラは作れます。
魅力的なラスボスと主人公は表裏一体。これを忘れずに創作活動がんばりましょう!

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