バトルシーンを書く上での弊害
戦闘シーンは最低でも一対一、片方の動きだけではなく
もう片方である相手の動きも読者に伝える必要があります。
ですが、ここに小説を書く上での落とし穴が。
例えば
Aの攻撃
→Bの攻撃
→Aがかわしてカウンター
→Bが喰らう。
これをただ順序よく書いてしまうとターン制と揶揄される現象が起きてしまいます。
描写というよりこれだとまるで解説です。
ではターン制って言われるのを回避するためにはどうしたらいいのか。
バトルシーンの描写の視点は片方に絞る
例えば主人公と敵が戦ってるなら
主人公の視点で固定する、ということです。
主人公がどんな攻撃をし、その攻撃が本命なのか誘導なのかの
駆け引きなどの心理描写を書きます。
敵からの攻撃がどれほど強大で恐ろしく、受け止めるときは
どれほど強力なのか、交わしたときは危機一髪だったなら
その主人公の心理描写を書き
そして交わした敵の攻撃が大地を抉るほどの破壊力があったのなら
「もしあれが直撃してたなら……」という戦々恐々の心理描写を書く、ということです。
ではここで例文をあげましょう。
まずはターン制と呼ばれる描写です。
<例文(ターン制ver)>
ショーゴは神経を研ぎ澄ます。
ソーサクの一撃は強力だ。
そもそも自分との力量の差があまりにも大きすぎる。逃げることもできない。
一発どころかかすっただけでも大ダメージは避けられないだろう。
「なら攻撃させなければいい」
そう結論を出してソーサクは渾身の力を拳に込めて繰り出す、が。
「怖い怖い」
しかしソーサクはまるでステップを踏むかのように華麗にかわした。
まるでダンスを踊ってるかのような軽やかさだ。
そのまましなやかに回転した反動で蹴りを入れてくる。
「……っ!」
ショーゴは間一髪でそれを躱した。
いや、違う。ソーサクはわざと外したのだ。
「すごいじゃないか。今のを躱すなんて」
言葉とは裏腹にショーゴの考えを肯定するかのように
ソーサクの目は相対する相手を完全に嘲笑っていた。
まるでじわじわと虫の手足をもぎ取りながら弱っていく姿を楽しむ子供の感覚。
ソーサクにとってショーゴは敵ではない。
ただの玩具だ。
<例文(手直しver)>
ショーゴは神経を研ぎ澄ます。
ソーサクの一撃は強力だ。
そもそも自分との力量の差があまりにも大きすぎる。逃げることもできない。
一発どころかかすっただけでも大ダメージは避けられないだろう。
「なら攻撃させなければいい」
そう結論を出してソーサクは渾身の力を拳に込めて繰り出す。
だがその拳に手ごたえはなく、虚しく空を切った。
理由は明々白々。躱されたのだ。
「怖い怖い」
様子からしてダンスでも踊ってるかのような軽やかさで回避したのだろう。
その姿はあまり言いたくないが華麗ですらある。
――――読まれたのか。
ぐっと気付かれないように唇を噛む。
実力差はわかっていたはずだがこうもあっさり、しかもふざけながら
躱されると怒りと同時に必ず一矢報いてやるという闘志が湧いてくる。
ふとソーサクの動きにわずかな変化があった。
それに気づくと同時に目の前に足、―――蹴りだ!
「……っ!」
ショーゴは間一髪でそれを躱し慌てて間合いを取る。
ほっとするがすぐに違和感に気付く。
違う、躱せたんじゃない。ソーサクはわざと外したのだ。
「すごいじゃないか。今のを躱すなんて」
くつくつ、と耳障りな笑い声がショーゴの鼓膜に響く。
言葉とは裏腹にソーサクの目は相対するこちらを完全に嘲笑っていた。
「……くそっ……!」
底のない闇の目を見た瞬間、隠し切れない震えが全身を走った。
先ほどまで己を鼓舞していた闘志があっという間に縮み
代わりに湧き上がってきた感情は屈辱、しかしそれを上回ったのは恐怖だ。
―――この男はまるで子供だ。
ショーゴの額から汗が一筋流れる。
さながら気分は善悪の区別もつけられていない子供に
じわじわと手足をもぎ取りながら命の灯が消えゆくのをただ待つ無力な虫。
自分はソーサクにとって敵ではない。
ただの玩具だ。
どうでしょう。
解説感が抜けてショーゴの緊迫感が伝わってきませんか?
ココに注意
ここで注意なのがこの視点を主人公から敵に
移しては決していけない、という点です。
あくまで主人公の視点で固定します。
主人公の目に映っている映像、肉体の五感で味わってる感覚、
緊張感などを携えた心を描写を書く、これを徹底すればターン制と
いわれることは無くなるでしょう
擬音は使っていいのかどうか
使っていいです。
擬音は手っ取り早く読者に表現を伝える手法です。
使うべきでしょう。
が、使いすぎると表現が陳腐になります。
どががが!バギッ!ブシャアアアアア!!
なんて単語が羅列してたらどう思いますか?
ちょっと白けちゃいますよね。
例えばキャラクターが苛立って机を蹴り上げる描写は
ドカッ!
怒ったショーゴは思わず机を蹴り上げた。
イライラは収まらない。
ガタンッと宙に舞った机が床に落ちてきた。
シーンと静まり返る教室。それが余計苛立たせた。
って書くよりは
苛立ちが抑えられないショーゴは思わず近くにあった机を蹴り上げる。
激しい嫌な音が教室に響き渡ったが怒りは収まらない。
宙に舞った机が床に叩き伏せられる。
ガタンッと音がした後は嵐が過ぎ去った後のような静けさが空気を支配した。
まるでその怒りは愚かな感情なのだと諭されてるようで余計腹立たしい。
って書いた方がよりキャラクターの心情は掴みやすいですね。
まとめ
・バトルシーンの描写は片方の視点で固定する。
・固定すると解説感が抜けた描写にできる。
・擬音は使用してもいいが使いすぎると陳腐になる。
いかがでしょうか。
今回はバトルシーンの描写について解説しました。
あなたの創作活動の力になれるように祈っています。