小説を書く上で欠かせない部分、それは地の文です。
場合によってはキャラのセリフより大切な部分ともいえるのではないでしょうか。
そしてこの地の文、いわゆる語り手が一人称(主人公視点)と三人称(神の視点)があります。
一人称は「俺は~」、三人称は「〇〇は~」っていうやつです。
今回は地の文について一人称と三人称のメリットとデメリットを解説しようと思います。
あなたの創作に少しでも力になれたら幸いです。
メリット<一人称の場合>
視点が主人公で固定しているのでわかりやすい
主人公に集中して物語を読み進められるため読者のストレスを軽減するメリットがあります。
小説はいかに読者のストレスを少なくして読んでもらうか、がポイントとなります。
さくさく小説を読みたい人という読者には一人称は好かれやすい傾向が強いです。
主人公の感情や思想がダイレクトにわかる。
漫画やアニメなどでは心理描写などは読者や視聴者に解釈が委ねられてる部分も多いですが
地の文が一人称だと主人公の心の内がしっかり描かれるので
読者にもわかりやすいというメリットがあります。
創作初心者におすすめ
主人公の視点に絞る書き方のため三人称に比べて書きやすいというメリットがあります。
ぶっちゃけて言ってしまうと三人称は書き手の力量が大きく出てしまいますが
一人称はそこまで書き手の力量に左右はされません。
なので小説書き始めたばかりの人やまだそれほど日数が経っていない人にはお勧めです。
読者がとっつきやすい
一概に全員の読者が、とは言えませんが少なくとも
小説家になろうにおいては一人称のほうが好まれやすいです。
何故なら小説家になろうの読者層は手軽に小説を読みたいという人が多いからです。
じっくり腰を据えてがっつり読みたい、という人はそれほど多くはありません。
三人称だと嫌煙して読まないっていう人も一定数います。
ギャグ描写に向いている。
ギャグ描写は疾走感が求められます。
一人称だと主人公の独白といってもいいためそれを利用して
疾走感があるギャグ描写を描きやすいという利点があります。
日常系に向いている
一つの場所で完結するということはキャラクターたちの動きもそれだけ少なく済みます。
キャラクターの動きが少ない=描写が少ない、ということになるため
主人公視点の一人称とは相性がいい、ということになります。
主人公に感情移入しやすく盛り上がりやすい
ダイレクトに主人公の気持ちがわかるので読者が感情移入しやすい利点があります。
また主人公と快楽、苦悩、挫折、復活などといった境遇を共有しやすいため
読者が得られる快楽も大きくなります。
デメリット<一人称の場合>
あくまで主人公からの視点でしかわからない
例えば主人公、ヒロイン、キャラAが同じ場所にいたとします。
一人称だと主人公視点で固定されているためヒロインとキャラAの心情は
主人公の解釈でしか察することができません。
このようにヒロインやキャラA本人たちが思っていることを知ることができない、というデメリットがあります。
もし読者が「他のキャラの心理描写も詳しく知りたい」と思った場合は一人称は相性が悪いです。
主人公が絡まない(その場にいない)シーンの描写に困りやすい
シーンごとで視点のキャラを変える(主人公→キャラA)ということで対応はできますが
読者が混乱しやすい要因にもなります。
対処としてはシーンごとではなく章ごとで視点のキャラを変える、とすれば読者も読みやすくなります。
例:第一章は主人公の視点の話
→第二章はキャラAの視点の話
……という感じです。
群雄割拠ものには向かない
群雄割拠ものとはつまり戦国時代といった複数の勢力や登場人物たちがぶつかり合う人間ドラマです。
登場人物が多い群雄割拠ものには向かない傾向があります。
キャラが多ければ多いほど情報は多くなり、描写が必要になります。
では続いて三人称の場合のメリット・デメリットの解説です。
メリット<三人称の場合>
繊細な描写が可能
神の視点での描写となるためキャラたちだけではなく
世界観の背景などもより詳しく描写することが可能です。
一人称では出せない重厚な物語の雰囲気を作り出すこともできます。
主人公の目が届かない場所での描写も可能
一人称では主人公の視点でしか描けない、つまり主人公が把握してる部分しか
読者は知ることが基本的にできません。
しかし三人称だとそういった縛りはないので主人公が知らない場所での出来事も書くことができます。
シリアス向けの作品にぴったり
全ての作品が、といういうわけではありませんが
シリアス向けの作品の地の文はほとんど三人称です。
一人称でも書くことは可能ですが作風とあまり噛み合わない可能性が大きくなります。
同じ出来事でもキャラによって違う思想を書ける
例えば遭難をテーマにした作品とした場合、
「遭難してしまった主人公」
「行方不明となってしまった主人公を待ち続ける妻」
「帰ってこない主人公の生存を信じつつも疲弊していく妻を見守る子供」
「心労で弱っていく妻を心配するあまり主人公の帰還を諦めるよう説得する妻の両親」
同じ出来事を書いたとしてもキャラによって立ち位置が違うため物語の見どころも変わります。
こういった場合、三人称だと非常に書きやすいです。
群雄割拠ものにめちゃくちゃ向いてる
上の「同じ出来事でもキャラによって違う思想を書ける」と内容が似ていますが
戦国時代ものだと全員が「天下統一」という終点に向かいつつも
そこに至るまでの過程や思想、きっかけやドラマはキャラたちによって全員違います。
そういった描写をするのに三人称は適切な手法でしょう。
デメリット<三人称の場合>
主人公に感情移入がしづらい
一人称はダイレクトに主人公の内心がわかるのでその分感情移入がしやすいですが
三人称だと神の視点となるため主人公に対しての読者の理解度が激減します。
ギャグ描写にはあまり向かない
工夫次第ではうまく描写することはできますが一人称に比べると
ハードルが上がってしまいます。
神の視点=作者にしてぶっとんだ描写にすることも可能ですが
作者介入というのは好き嫌いがはっきりと分かれるので
使い方によっては「サムい」と捉えられることも……。
初心者にはちょっと難しい
神の視点、といえば聞こえはいいですが描写がその分難しくなります。
つい難しい言葉を使ってしまったり造語を多用しまくる、といった
初心者にありがちなことをしてしまう傾向が高くなりがちなところ。
三人称はやれることが多い分、構成や技術で作者の力量が思いっきり表にでます。
なろう読者にはウケがよくない
なろう読者は全員がそうではありませんが
さくっと気軽に読める作品を基本的に求めています。
三人称のような丁寧な描写をじっくり腰を据えて読むという
読者はあまりいないのが現状です。
そういう読者たちにも読んでもらうためには相当物語を魅力的に書く必要があります。
まとめ
ざっくり要約するとこうです。
一人称におすすめな人
・まだ小説を書き始めてそれほど経ってない初心者。
・小説家になろうで活躍したい。
・日常系などの作品。
・登場人物がそれほど多くない。
三人称におすすめな人
・何作か小説を書いていてある程度慣れている。
・群雄割拠ものや登場人物が多い作品を書きたい。
・小説家になろうだけではなく出版社のコンテストにも出したい。
・重厚な世界観やキャラの心理を描写したい。
物語を紡ぐのはあなた自身。
あなたが心を込めてあなたの色を出した作品は必ず誰かの心に響きます。
地の文はあくまで手法の一つ。自由に書くのが一番いいのです。