恋愛要素は物語の盛り上げには重要な要素。
本筋とは違うストーリーが差し込まれることによって物語がより情熱的に激動的になり
読者の好奇心や作品への意欲をより高めてくれます。
しかし一方で恋愛要素に拒否反応を示す読者もいます。
それはなぜなのか、恋愛要素はあなたの作品に取り入れるべきなのか、そうではないのか。
切り分けと対策を解説していきます。
Contents
恋愛要素は自分の作品に取り入れるべきかの判断
自分の作品の方向性をしっかり認識する。
例えば女性向きの作品だとイケメンなどの男性キャラが多く女性キャラはあまりいない。
逆に男性向きの作品だと美少女キャラや美女キャラが多く男性キャラはほとんどいないといった傾向があります。
つまりどこの読者層に向けてる作品なのか、どういったファンがついてくれているのか
ちゃんと作者であるあなたが認識する必要があります。
これを間違えてしまうとあなたの作品を愛してくれるファンの怒りを買ったりあるいは悲しませたり
最悪あなたの作品から離れるだけではなくアンチになる可能性も出てきます。
例:とあるアイドル物の作品(※架空の作品です)
美少女ばかりが登場し男性キャラはたとえ主人公の父親であろうと顔は映らず声すらなし
可憐で美しく困難に見舞われながらも夢に向かって力いっぱい突き進む女の子たちは男性ファンに大きな支持を得ていたが
ある回で今まで男性キャラの面影は一切なかったのにいきなり男性キャラが現れ
美少女たちはみんな男性キャラに恋に落ちてしまい壮絶な男性キャラの奪い合いをする……。
この作品のファンたちは恋愛要素というものは全く求めていなかった。
にも拘わらずそういったニーズをくみ取らず今まで一切登場してなかった男性キャラを出して
恋愛要素を入れてしまったせいでファンからの怒りを買うことになった……っていうわけなのです。
自分の作品がどういった層に向けた物語なのか
今一度しっかり振り返って確認しましょう。
物語中盤終わりごろや終盤でいきなり恋愛描写をぶち込む
何故物語の中盤や終盤で恋愛要素を入れるのはやめた方がいいのか
いわゆる推しキャラ、読者が好きになるキャラというのは色々種類があります。
・見た目が好み
・性格が好き
・活躍した回で好きになった
などなど色々な理由があります。
そしてその理由の一つとして「特定の相手キャラがいないから」というのがあるのです。
これはつまり特定の相手キャラ=恋人や好意を寄せる相手がいない、ということです。
特定の相手キャラがいないキャラを推す人はそのキャラの恋愛要素を後付けで描写されるのを非常に嫌う傾向が強いです。
そういうファンたちは全員が必ずしもそうではありませんが
「推したキャラがたまたま相手キャラがいなかった」ということではなく
「特定相手キャラがいないから推した」という人が実は結構いたりするのです。
つまり「相手キャラがいないから安心して推してたのになんか終盤で急に恋愛要素つけられた!」っていうことになりかねません。
読者によっては「推してたけど相手キャラができたから推すのやめた」
「こんなことになるなら推さなかった」という人も一定数いるのです。
とくに主軸となる物語に全く関係ない、とってつけたような恋愛描写だとより嫌悪感を抱かれます。
ココに注意
中には自分の好きなキャラに恋人ができても「推しが幸せならそれでいい」という人たちもいます。
ですが読者が想定してなかったようなタイプのキャラと自分の好きなキャラが結ばれた場合や、取ってつけたようなフラグ→恋人関係への発展があまりにも雑だと
「どうせ誰かと結ばれるならもっとマシなキャラがよかった」なんて悲しいことを言われることも……。
そして物語中盤ならまだしも終盤で急に恋愛描写を入れられた場合
お互い惹かれ合う過程がバッサリ省略→最終回で恋人関係になりました!っていうパターンも実はあったりします。
こんな描写されたら好きなキャラが幸せにしてても全く祝福できない!となるのです。
最終的に結ばれるなり悲恋に終わるなりにしても互いに惹かれ合う描写は恋愛描写には必須の過程です。
それをすっ飛ばしたり雑に描写されると読者はついてきてくれません。
キャラ設定が破綻するような恋愛要素は絶対ダメ
一言にキャラといっても様々な属性があります。
その中でも明らかに「このキャラは恋愛とかしないだろ」とか
「恋愛なんてする余裕なんてこのキャラにはないでしょ」といった
キャラクターが作品によっては存在します。
ゆえに恋愛要素を突っ込むとそのキャラクターの設定が破綻するといった可能性があるのです。
例えば、宇宙人に家族を殺されて復讐のために生きてる主人公が
「宇宙人と仲良くしたい」
というヒロインを好きになるでしょうか?
復讐に生き、頭の中は家族の敵討ちでいっぱいな主人公が恋愛をする余裕などあるでしょうか?
恋は誰もが胸の中に生まれる可能性があるものではありますがキャラクターに背景によってはそれはキャラ設定の破綻につながることを忘れてはいけません。
むやみやたらに誰も彼もに恋愛描写をぶち込まない
よくあるのが次の世代の話を作ろうと思いついて最終回あたりで
いきなりカップルが乱立するだったり
登場人物ほぼ全員がカップル成立、しかも子供たちが全員同年代なんてことになると
みんな発情してるみたいでなんか嫌
なんか余りもの同士でくっついた感がどうしてもぬぐえない
というか普通に気持ち悪い
……なんていう意見が出てくる可能性があります。
盛っているように見えますが実際に(作品名はさすがに伏せますが)起こったことなのです。
次の世代の物語を作るために子孫を残す描写を作る=カップル乱立ということが起こりやすいですが
「え!?そことそこがくっつくの!?」っていうのを避けるためにはやはりちゃんと結ばれるキャラ同士の交流描写は必須です。
読者に拒絶されず恋愛要素を入れるにはどうするべきか
特定の相手キャラ同士を一緒に登場させて交流を持たせておく
つまりもう登場した最初か物語初期の段階で二人とも登場させて恋愛描写有無関係なく交流描写を設けさせておく、という方法です。
後に恋愛関係に発展しても「序盤から交流あったし意識してる描写もあったからそうなるか」と読者は納得しやすいです。
またキャラに異性の影があれば読者は鋭いので「このキャラたちはくっつくかもしれない」と感づきます。
「特定の相手キャラがいるキャラは推さない」という人も前もってこういった描写を設けていれば防波堤にもなります。
一緒に困難を乗り越えたエピソードを入れる
おそらく最も読者に納得してもらいやすい手法です。
カップル予定のキャラ同士を同じ困難や問題にぶち当たらせて一緒に乗り越えさせる、という方法です。
乗り越えたという達成感から生まれる絆から恋愛感情へ発展させる、というのは非常に説得力があります。
そこでお互いの心情を語り合ったり、過去の話をしたり距離を縮めるエピソードを入れるとなおいいでしょう。
そして二人だけの秘密などを作るとより効果的になります。
例えば世間一般的には後ろ指を指されるようなことをした二人の場合は「これで私たちは共犯者だね」と言ったり
逆に英雄的なことをしたら「俺たち二人で成し遂げたんだな」とお互いに激励し合うなど
二人しか共有できない感情や出来事を挟む、という特別感を持たせるととてもいいですね。
物語の大筋に関わらない恋愛描写は入れない
物語の根幹、そのキャラの原動力にならない恋愛描写は入れないようにしましょう。
「その恋愛って物語に必要?」という読者の疑問を抱かせてしまいファンの失望を買うことを回避できます。
では逆に物語の大筋に関わるような恋愛描写とはどういうことなのか。
実際の作品を例に挙げてみましょう
桜木花道(SLAM DUNK)
有名なバスケット漫画「SLAM DUNK」より主人公の桜木花道です。
彼はバスケット未経験者であり高校入学直後、ヒロイン赤木晴子に一目ぼれし
彼女に振り向いてもらうためにバスケ部に入部。
そして晴子が片想いしている相手、スーパールーキー流川楓にライバル心を燃やし
晴子への恋の成就、打倒流川を掲げバスケットの道を進んでいく……といったキャラクターです。
つまり彼のバスケへのモチベーションは晴子への恋なのです。
花道の「バスケットが上手くなりたい」ということと「晴子に振り向いてほしい」が密接につながっています。
そして恋敵である流川への闘争心も「晴子が夢中になってるのが気に食わない」
→「バスケが上手いから晴子の視線を独り占めしている」
→「バスケで勝ちたい」
→「上手になりたい」へとつながるのです。
ナツキ・スバル(Re:ゼロから始める異世界生活)
小説家になろう出身の作品「Re:ゼロから始める異世界生活」より主人公ナツキ・スバルです。
彼はあるとき突然異世界に転移し途方に暮れていたところにハーフエルフのヒロイン、エミリアに救われ
彼女の美しさと優しさに惹かれ恋に落ちます。
しかしスバルが持つ能力は死んで発動する「死に戻り」だけで他は一般人レベル。
戦闘能力は序盤はほぼ皆無であり知恵を使うシーンはありますが
それでも戦闘となると誰かの手を借りなければ全く敵に太刀打ちできません。
スバルはエミリアを救うため何度も挫折を経験し困難に阻まれ一度は全てを投げ出そうとするも
奮起し周囲の力を借りながら乗り越え本当の意味で「主人公」に至るのです。
決して諦めない彼の精神性の根幹にはエミリアへの恋があるからです。
坊ちゃん(死神坊ちゃんと黒メイド)
「サンデーうぇぶり」にて連載されている漫画「死神坊ちゃんと黒メイド」より坊ちゃんです。
なお本名は明かされていないため作中では「坊ちゃん」と呼ばれています。
彼は五歳のころ、とある魔女に非常に強力な呪いをかけられてしまいます。
それは「触れたもの全てを死なせてしまう」というものです。
これによりお互い想いを寄せ合うメイドのアリスに触れることができず辛く苦しい日々を送っており
「アリスと手を繋ぎたい」というささやかな願いを叶えるために魔女の呪いを解く手がかりを探し続けるのです。
本作は触れ合えないからこそ切ない二人の純愛という面もありますが
だからこそアリスの逆セクハラといった二人の掛け合いだったりちょっとしたことで幸せをかみしめる二人を
楽しむ作品でもあります。
まとめ
・何でもかんでもキャラに恋愛要素を付け加えない。
・その作品やキャラには本当に恋愛要素は必要なのか見極める。
・読者たちのニーズはどういったものなのかきちんとリサーチする。
・とってつけたような恋愛要素なら最初から描写しない。
恋愛描写は物語をより鮮やかに彩る要素です。
ですが使い方を間違えれば物語の魅力を損ねることもあります。
今一度、その恋愛描写が本当にそのキャラには必要なことなのか
物語を動かすうえで欠かせないものなのか考えてみましょう。